シンプルなVFD時計

自宅のジャンク箱から発掘したuPD848Cという専用ICを使ってVFD時計を作りました。結構簡単に作れるのでおすすめしたいのですが、手に入りにくい古いICなので新しくVFD時計を作ろうとしている人にはあまり参考にならないかもしれません。

PICマイコンを使って作ったVFD時計はこちらをご覧ください。

uPD848Cとは

NEC製の車載用ワンチップ時計ICです。VFDを直接駆動することができます。ダイナミック点灯はできないので配線は多くなりますが、バッファを挟むことなくVFDにつなげられるのでマイコンで制御するより部品点数を減らすことができます。

uPD848C

uPD848C

このICの主な機能です。

  • 外付け水晶が基準信号
  • 4ケタのVFDを直接駆動
  • 12/24時間表示切り替え
  • 1Hz出力
  • 時/分、分/秒表示切り替え
  • 時報
  • 明るさコントロール(2段階)

このような時計専用LSIはマイコンが普遍的に使われるようになる前まで電子工作でもよく扱われていたようです。ニキシー管駆動用やLED駆動用、AC同期式のものなど、たくさんの種類のICを各社が出していたようです。今どき製品の時計をばらしてもCOB実装のチップが出てくることがほとんどなので、このような巨大な42ピンDIPのICは逆に新鮮に感じます。

設計・回路図

ほぼデータシート通りの回路構成です。使用したVFDはNECのLD8035で、古い管ですが共立エレショップなどで今でも簡単に手に入ります。

VFD時計の回路図

VFD時計の回路図

ほぼデータシート通りです。使用した VFD は NEC の LD8035 です。古い管ですが、共立エレショップなどで今でも簡単に手に入ります。

この VFD と uPD848C のために12Vの電源が必要なのですが、ヒーター用に低い電圧も用意する必要があります。抵抗器やシリーズレギュレータなどで作ってもよいのですが、発熱対策でスイッチングレギュレータ IC の LM2575T-ADJ を使ってみました。この IC で1.23Vを作っています。

水晶に4.194304MHzという微妙に手に入りにくいものが必要です。特別高精度なものはほとんどないと思うので、トリマコンデンサで発振周波数を微調整できるようにしてあります。

uPD848C の電源電圧は最大7Vなので、ツェナーで5.6V を作っています。また、Vssを5V ほど GND から浮かせることで VFD の直接駆動を可能にしています。

今回は時報機能を使用していないのですが、32番ピンから1024Hzの信号が1秒間出力されるのでバッファを挟んでスピーカなどにつなげれば使えます。

製作過程

基板設計・組み立て

小型に仕上げたかったので2段構造にしました。

完成したVFD時計

完成したVFD時計

42番ピンからテスト用の2048Hzが出力されるので、周波数がちょうどになるようにトリマコンデンサを調節します。スタティック点灯のせいで配線量がかなり多く、完成後では回しづらいので、今回のように小さく詰め込む場合には早い段階で調整したほうが良いでしょう。

うまく小さくまとまったので良しとします。

主要部品リスト

部品名 型番・仕様 メーカー・備考
時計IC uPD848C NEC、42ピンDIP
VFD LD8035 NEC、4桁表示
スイッチングレギュレータ LM2575T-ADJ Texas Instruments
水晶発振子 4.194304MHz
ツェナーダイオード 5.6V IC電源用
出力コンデンサ 低ESR品 スイッチング電源用

*2021/5/11追記

後日、ジャンク箱を整理していたら専用基板と思わしきモノが出てきました。NECのロゴが入っているので、どこかのお店のキットとかではないようです。評価基板のようなものだったのでしょうか?

専用基板の表面

専用基板の表面

専用基板の裏面

専用基板の裏面

uPD848Cのデータシートと同一の回路をこの基板上に組めるようです。データシート指定のLD8164というVFDを使うとこの基板上にすべて実装できるようです。電源やスイッチ、アラームなどの入出力は基板端の端子に引き出されています。

LD8164は販売している店舗を見つけられなかったのでこちらの基板を使うことはできませんでしたが、入手できていれば使ってみるのも面白かったかもしれません。