可変クロストークヘッドホンアンプ
ice458 / 2026年01月10日 — オーディオ・電子工作
4極ジャックを用いた特殊な回路方式により、コネクタ接触抵抗を含む共通インピーダンスによるクロストークを大幅に抑制し、アンバランス出力でありながら全可聴帯域でクロストーク -95dB以下を実現。さらに加算回路とデジタルポテンショメータを用いて、クロストーク量を-98~-20dBで任意に調整可能なヘッドホンアンプ。
仕様
- 電源: 9V (DCジャック)
- クロストーク: ≦ -95dB (20kHz以下)、-98~-20dB可変
- 入力: バランス (6.3mm TRS×2)
クロストーク低減のメカニズム
負荷から戻る電流 (iR+iL) が共通インピーダンスZcmで電圧に変換され、もう一方のチャンネルに混入することでクロストークが発生。概算式:
Crosstalk [dB] ≈ 20 log10(Zcm / Zload)
すなわちZcmが極小であればクロストークも極小。
- 基本方針: Zcmをフィードバックの力で1/Aにする。
- 出力コネクタ構成: 4極ジャックのスリーブを2接点化し、電流経路のS端子とクロストーク検出用のR2端子を分離。
- 基準電位の固定: S端子電圧を制御し、回路全体の基準となるR2端子を (VDD-VSS)/2 に固定。CMRR/PSRR由来のクロストークや歪みを低減。
- 接触抵抗対策: R2端子側にバッファを設け、R2端子接触抵抗の影響を低減。
- 前段クロストーク低減: 信号増幅を反転増幅化し、信号GNDへ流れる電流を減らして出力段以前のクロストークを最小化。
- 未挿入時の安定化: Rfにより、ヘッドホン未挿入時でも信号GNDを固定。
設計上の工夫
- 差動→シングル変換: 初段差動回路の基準電圧入力を反転信号で駆動。HOT/COLDの入力インピーダンスを同じにする。
- 電子ボリュームの直列接続: 音量によらず一定のクロストーク割合を維持。
- 基板上のガードリング: 初段や混合段での意図しないクロストークを防ぐ。(効果不明)
測定結果
両ch 51Ω負荷・出力 1Vrmsの正弦波で測定。全可聴帯域で -95dB以下、1kHzでは -108dB以下を達成。ただしDMMの保証確度以下なので参考値。

クロストークの低減メカニズム

クロストーク周波数特性
左: 可変機能OFF時 右: -20dB設定時
本機のクロストーク低減技術について
4極ジャックのスリーブを2接点化し、リターン電流経路(S端子)と基準電位ノード(R2端子)を分離する基本構成は、ニックネーム氏(Thyris Electronics)による特許第7801839号と共通します。同特許がS端子をパワーグランドに直結し、R2端子で検出した電位をバッファ経由で信号処理の基準として追従させる構成であるのに対し、本機ではアンプによる能動制御でS端子を駆動してR2端子電位を(VDD-VSS)/2に固定する点が異なります。